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ふゆのよる


川向こうの国道を走る車の音が

雨が止んだことを教えてくれた


何にイライラしているか自分でもわからぬまま

とりあえずあたりさわりのない

小銭入れを壁に投げつけて

手当たり次第に目についた服を着こんで

用もないコンビニに向かった


そこにはかりそめの暖かな幸せらしきものがあり

でもたぶんそれが真実で

70年代のアメリカの魔女の家庭が

まやかしだったように

日本の昭和の団欒もまやかしで

母親たちが一生懸命

そうありたいと願っていただけのものだったのかもしれない


その怨念のような

おでんを二つ三つ買って

雪になりきれないみぞれ雨を肴にしながら

死体のように硬直した

冷たい足をさすっている








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冬の日


平年並み、という言葉がここ数十年のことでしかないことを知りながら

いつもじゃないこの冬を少し恐れている自分を

暴かれることに、また

恐れている自分がいる


津波のことなんて

ちっとも教えてくれなかった占い師を

フォローもしないまま毎日チェックしながら

僕は緑の猿と落花生を食べている






ビコ


うっすら雪の積もった朝に

思いきって窓を開けたら

10代の自分がそこにいた

ピーター・ゲイブリエルが 「ビコ」 を歌っていた頃だ



あの頃冬が好きだったことを

妙にリアルな触感で思い出して

あの頃僕は毎夜窓を開けて

あきずに冬の星座の三ツ星を眺めていたけれど

それで現世と折り合いがつくわけでもなかった



ゴミ出しの帰り

緑の猿がネギを一束もらってきた

泥と雪のついた冬のネギは甘くておいしい







雪はいつの間にか大粒の雨に変わっていた

「冬の雨ほど悲しいものはないな」

緑の猿が梨をむきながら、つぶやいた



生きる意味も、孤独の定義も

結局はあとづけでしかない

当事者はかっこわるくみじめに

ずぶ濡れになっているだけだ



ウイスキーで焼けた胃に

冷たい和梨のみずみずしさがほっとする


「やまない雨はない」 なんて何度も言わないでくれ




便り


せっかくお湯を沸かしたのに

お茶もコーヒーも入れる気にならず

一口二口の白湯を飲む



雪が舞っている

緑の猿からの遅い遅い便り


バンドネオンをかけていると

鬱もニヒルな俳優の演技のように思えなくもない








クロワッサン


Thad jones の 「April in paris」 はうまいクロワッサンみたいなんだ

緑の猿が無心にパンを頬張りながら言った

クロワッサンは食べたあと床がパン粉まみれになって困る



悲しみを昇華するなんて無理だよ

見えないオリが雪のようにグラスの底に降り積もってゆく


あきらめろ、あきらめろ

あらゆる経文が何千年そう言い続けている


床に残ったバターのしみは一生消し去ることはできない

でもそれはそれでそういうものなのだろう

生きた痕跡なんて、その程度の喜劇に過ぎない






トゥーランドット


茶色のひもを引くとゴボウ

白いひもを引くと山芋だった


一見何もない土だけの畑は

収穫の最盛期だった

緑の猿は自慢げに僕を一瞥すると

僕を置いてトラックに乗って行ってしまった



ラジオからプッチーニのトゥーランドットが聞こえてきた

「私がじゃがいもを植えないのは幸せの匂いがするからよ」

マリア・カラスは確かにそう歌っていた







海に近い街


緑の猿の消息を聞かせてくれたお礼に僕は地底人に梨を一つあげた。


いずれ僕も地底の闇の中に溶けていって消えるのだろう。

もう猿を捜す気力も残っていない。


海に近い街で生まれたはずなのに

私は私の知らない

海に近い街にいる。


知らない街の地底で

僕は一つ大きなため息をついて

その地熱に溶かされてゆくのだ。







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